【レビュー】新人薬局薬剤師が読んでみた!アンサングシンデレラ1~3巻の感想
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薬局薬剤師のmoka(@mokapple)です。新人薬剤師です。
今巷をにぎわせている、薬剤師が主人公の漫画、アンサングシンデレラをご存知でしょうか?
2019年12月現在、3巻まで発売されています!
2年目の病院薬剤師が主人公ということもあり、親近感を覚えた私は、さっそく購入して、読んでみました。
ネタばれを含みますので、ご注意ください。
薬剤師が主人公!!
ではまず、1巻の感想から!
薬剤師が主人公であるという事に、心の底から感動しました。
医療従事者の中でも、薬剤師は縁の下の力持ち、という感じで、表には出てこないんですよね。
そんな影の薄い薬剤師が、主人公だなんて・・・!
私は薬局薬剤師で、主人公は病院で働く2年目の薬剤師です。
働く場所は違いますが、年齢や境遇が近いこともあって、彼女の感じ方や考え方にすごく共感を覚えます。
例えば、最初のモノローグ。
大学を卒業して、薬剤師の資格を取るまでって、本当に大変ですよね。
私も吐きそうになるまで勉強しました。
なのに、いざ現場に出てみると、「あれ、薬剤師っていらなくない?」って思ってしまう事って、とても多いんです。
医師には「そんなケアレスミスでいちいち電話するな」という態度をとられるし、患者さんには「薬が出てくるのが遅い、薬剤師が余計なことするな」と怒られたり。
学生時代に思い描いていた薬剤師像と現実とのギャップに困惑しながらも、自分の追い求める薬剤師になろうともがいている。
そんな主人公の気持ちが、痛いほどわかります。
病院薬剤師の仕事内容がわかる
薬局薬剤師の私にとって、病院薬剤師はある意味未知の世界です。
業務内容は学生時の実習でざっくり知ってはいるものの、薬局とは取り扱う薬も違うし、対応する患者さんも異なります。
点滴や注射はわからないし、カルテも読めない。
最悪患者さんの病名や症状さえわからないこともある、そんな薬局薬剤師のわたしからすると、病院薬剤師さんは憧れの的でもあるんですよね。
このシーンはとっても格好良かったです。
降圧薬を飲んでいた患者さんがハチにさされ、エピネフリン投与でも血圧が上がらなくなってしまった話のワンシーンですが、瀬野さんが格好良かったですね!
結局エピネフリン→グルカゴン投与で事なきを得ましたが、グルカゴンの作用機序がすっかり頭から抜け落ちていた私は、なぜβブロッカー服用の患者さんに効いたのかわからず・・・。下記URLを参考にさせていただき、復習しました。
https://hospital.city.sendai.jp/pdf/p062-065%2035.pdf
薬局薬剤師として働きながら感じたことですが、作用機序を患者さんに説明することは、まずありません。ですが、作用機序を自分が理解していなければ、きちんとした薬の説明をすることもできないのです。
知識をアップデートするだけでなく、忘れないようにしていくことも重要ですね。
棚卸って辛い
業務の中でも、私が最もつらいと感じるのが棚卸です。
在庫を絞らなければいけないので、高い薬が出るとヒヤヒヤしますし、深夜まで帰れないし、ずれていたときの恐怖を考えると胃が痛いし、辛いことだらけです。
そんな棚卸から始まる2巻ですが、読んでいて驚いたのが、バラ錠の数が目分量で良い、ということ。私のいる調剤薬局ではそれはあり得ず、1つ1つすべて機械で個数を数えています。
漫画中で棚卸を仕切っていた刈谷さんが調剤薬局出身といわれていたこともあって、調剤薬局のほうが、病院より在庫管理には厳しいのかもしれないですね。
漫画では、口腔外科の抗生物質の処方量が多いということで、問題になっていましたが、棚卸の結果を、処方医にフィードバックできるのは病院ならではだと思いました。
年収の話がリアル
薬剤師は、ほとんどが製薬会社、調剤薬局、病院のいずれかに就職すると思います。
4人並んで飲み会をするシーンでは、MR、ドラッグストア、調剤薬局、病院、それぞれに勤めているキャラクターの性格がすごく表れていましたね。
MRさんは高給取りですが、プライベートを犠牲にする覚悟と、体力は必要。
ドラッグストアは深夜まで開いていたり、ワンオペも多いので、ハードさは、調剤薬局と製薬会社の中間のイメージです。
病院薬剤師は仕事もきつい上に、年収も低いですよね。やりがいはとてもあると思います。
何を第一優先に考えるかで、おのずと就職先が決まってきますね。
私は、仕事では、病院薬剤師が1番やりがいがあって楽しそうだな、とおもいつつ、年収の低さと、休みの少なさで、諦めてしまいました。
ドラッグストアの薬剤師と病院薬剤師
薬剤師として働く以上、患者さんの安全を第一優先で動くのは当たり前だと思うのですが、とんでも調剤をしてしまった小野塚君の気持ちもすごくわかります。
私が転職の際に紹介された薬局では、彼の薬局のように24時間営業、夜勤ありの店舗もありました。
疲弊するまでこき使われ、患者さんにも早く薬を出せ出せと怒られ、彼のように投げやりな気持ちになってしまうのは理解できます。
本当に投げやりになったらもちろんダメですけどね。
卸さんが閉まった後に在庫がない薬の書かれた処方箋を受け取ってしまった、というのも、ワンオペだとすごく大変だと思います。
新人だった小野塚君が、最初に抱いていた気持ちを忘れてしまうくらい、疲労しきってしまった様子が痛々しくて、薬剤師の労働環境は、もう少しどうにかならないものかなーと思ってしまいました。
安い処方の提案
漫画の後半では、狭心症になった患者さんが、医療費の心配から、治療を適切に行えない可能性が出てきます。
そう、治療ってお金がかかるんですよね・・・!
私が実際に薬の値段を意識し始めたのは、調剤薬局で働きはじめて、しばらくしてからです。
正直、通院や服薬が、患者さんの経済状況にも大きく影響するものだとは、薬剤師として働くまでは、全く考えたこともありませんでした。
ジェネリックを含め、薬の値段を一番把握できるのは薬剤師だと思います。
薬の飲み合わせ、副作用以外にも、経済的な面から患者さんを支えることは、薬剤師に求められているのかもしれませんね。
というわけで、1巻はザ・医療系、という感じでしたが、2巻は金銭的な問題も絡んだ、より現場にリアルな内容だったと思います。
お金の問題は、薬剤師の仕事をしていくうえで、避けては通れないもの。
どうすればより良い治療が行えるか、様々な観点から患者さんと向き合う必要がありますね。
怒涛のインフルラッシュ
さて、3巻は怒涛のインフルエンザラッシュから幕を開けましたね。
かなりのカオス状態でした。
1巻で子供ちゃんを抱える母親もそうでしたが、「タミフルは危険!」と、ネットの情報を鵜呑みにしてしまう患者さんが現れました。
情報社会の今、溢れる情報の中から正しい情報を選別するのって難しいですよね。
誰が書いたのかわからないネットの情報の方が目の前の薬剤師より信用されてしまうなんて、悲しいです。
こんな時こそ、薬剤師と患者さんの信頼関係が大切だと思わされました。
おじいちゃんとお孫さん
そして、3巻は、命に焦点が当てられていました。
医療従事者である以上、命のやり取りが発生するのは当たり前なのでしょうが、薬局薬剤師である私からは、なかなか経験することのないお話でした。
死をどう受け入れるか、そして、その家族をどう見守っていくか・・・。難しくて答えのない問題ですが、私もしっかりと考えて行かなくてはならないなと、感じました。